貞享五年(一六八八)六月。 一松は江戸小伝馬町の牢屋敷大牢にいた。 一松は摂津三田藩三万六千石九鬼長門守の上屋敷に 中間の子として育った。 八歳になった頃には付近で悪松の名で知られていた。 この日、一松は牢屋敷前で百叩きの上、 江戸所払を命じられた。