家族狩り


読書開始 2003/6/7

読書終了 2003/6/15

作者:天童荒太(Tendo Arata)

出版社:新潮社

発行日:1997年11月20日

価格:¥2300


登場人物

高校の美術の教師、巣藤浚介の恋人、美歩。

生徒の芳沢亜衣、亜衣の両親、孝朗と希久子

児童相談センターの氷岬遊子

刑事の馬見原(まみはら)光毅警部補の恋人、冬島綾女、彼女の子供研司、

綾女の夫油井。

馬見原の娘の真弓、妻の佐和子

家族一家惨殺された、麻生家と実森靴店一家。

大野害虫消毒の大野(旧姓山賀)甲太郎、

その妻加葉子(電話相談受付)と息子香一郎。

感想

上の登場人物が複雑に絡み合い、物語は展開する。

とにかく暴力的な描写は抜群でバイオレンス物にも負けない迫力。

それに加えて暴力に至る心理描写と精神状態の表現も素晴らしい。

家庭の崩壊を家がシロアリによる崩壊を対比して崩壊するプロセスを

表現している。

始めは個々に登場した人物が絡み合いお互いに複雑に関係していく

過程がテンポよく展開するので550頁を一気に読めました。

 

愛の年代記

読書開始 2003/5/31

読書終了 2003/6/7

1975年3月30日発行

1996年12月25日16刷

新潮社

¥1214(税別)

目次

大公妃ビアンカ・カペッロの回想      ジュリア・デリ・アルビツィの話

エメラルド色の海               パリシーナ侯爵夫人の恋

ドン・ジュリオの悲劇             パンドルフォの冒険

フィリッポ伯の復讐               ヴィネッィアの女

女法王ジョバァンナ


描かれたエルダー


読書開始 2002/6/20

日本経済新聞社編

集英社発売 ¥1470


自分の人生をちょぴり振り返ってみませんか?

「エルダー」とは何か?50代以上の、
主に高齢者をエルダーと呼びます。


小説、映画、テレビドラマ、コミックに登場するエルダーたちを描いた「日経」の

人気連載コラムが、一冊の単行本になりました。

 


箸墓幻想


 

読書開始 2003/3/22

読書終了 2003/3/22

出版社  毎日新聞

価格    ¥1700

作者    内田康夫


卑弥呼の墓とも言われながら、実際はベールに隠された奈良・箸墓古墳。

その謎を追求していた、畝傍考古学研究所の元所長、小池卓郎が殺される。

真相を追う浅見光彦を待ち受けていたのは、歴史を超えた、女たちの冥い情念だった。

闇は御霊たちの呪いのように冷たく,深い‥‥。

やがて起きた第二の殺人に、浅見は‥‥。

戦慄の展開。驚天動地の結末。限りなく深い余韻。

毎日新聞日曜版に連載され大反響を呼んだ、内田文学の新たな頂点!


「箸墓幻想」読後感  2003/4/2

 

この本を最初に見て今までの一連の“浅見光彦シリーズ”の

推理小説だなぁと思い、本を手に取りました。

例のTVの水谷豊の浅見光彦を頭に描きながら読んでいる内に作者が考古学と

推理小説を絶妙の組み合わせで構成し、今までにない推理小説になっているではな

いですか、一気に読破しました。

 

プロローグがこの本の全てを暗示しています、

「春浅い大和路を歩く考古学者の小池は思う“卑弥呼と邪馬台国の存在を

証明するために、自分は死ぬのだ」”と。

 

 読み進んでいく内に、

「二上山上に瞑(ねむ)る大津皇子の悲劇と当麻寺(たいま)縁起である

「中将姫」の曼荼羅にまつわる、妖しくも悲しいストーリーだった。」(P60)

と折口信夫の「死者の書」を核に置き、物語は悲劇へと進む。

 

そうです、私もあの世も、幽霊も亡霊も信じます

古いもの、ある特定の場所には異次元の世界があるのです。

 

作者も箸墓古墳より盗掘された画文帯神獣鏡に宿る呪いを人間の恋愛感情を

絡めて物語を構成しています。

 

あなたも大きな木と向き合った時とか、古いお寺の仏像を拝む時、

背中がゾクゾクしたり、頭の中を何かが過ぎるのを感じたことがありませんか。

私はいつも感じます、シックスセンスが働くのです。

 

話が横道にそれましたが、

「これとこの一通の手紙だけが残されているとだけは確かですね。

そう考えると、どうしてもこの女性が初恋の君であるというストーリーしか

思い浮かばないのです。そう思うのは単純すぎますかね」(P151

物語は推理小説のパターン通り、残された遺留品から浅見は推測し手掛かりを

求めていく。

 

そして、浅見は手に入れた情報をもとに、奈良、東京、長野と行動力を発揮する。

 

この本を特に面白いと感じたのはやはり

古都奈良を中心に物語が展開していることでした。

「あおによし奈良の都は咲く花のにほふがごとくいま盛りなり」(P181

と随所に古都の風景描写が描かれ、これが人物と良く関連づけて書いてあります。

この本の秀逸なところは作者が一時話題になった、“石器捏造”事件がある前に

このアイデア?を取り入れたことでしょう。

 

何はともあれ、女性の怨念をテーマに話は展開していくのですが、

 

「いいえ、本当にそうですのよ。明美ばかりでなく、お若い方のほとんどが、

お年よりは昔からずっとお年寄りで、化石みたいな生き物だと思ってますのよ。

そのくせ、千年以上も昔の大津皇子や額田王のラブロマンスに憧れたりするの

ですから、何を考えているやら、まったくわかりませんわねえ」

真顔で言うので、浅見はどう応じればいいのか、困ってしまった。(P390

 

の文章のように登場人物の魅力的な?お年寄りの昔のラブロマンスと奈良の

歴史を絡めた推理小説です。


ホケノ山古墳 

3世紀中ごろ最古の前方後円墳か前例ない「二重」墓室の木槨(もっかく)構造 画文帯神獣鏡も出土(平成12年3月28日新聞報道)