<著者・舟橋聖一〉
一九〇四年、東京生まれ。
一九二六年、戯曲「白い腕」で文壇にデビュー。六三年『ある女の遠景』で毎日芸術賞六七年『好きな女の胸飾り』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。七六年、七十一歳で没。幕末の大老・井伊直弼の生涯を流麗な文章で描いた本書は、歴史小説史上に燦然と輝く氏の代表作である。 著書に『お市御寮」。」
三十五万石彦根藩主の子ではあるが、十四番目の末子だった井伊直弼は、わが身を埋木に擬し、住まいも「埋木舎」と称していた。
「政治嫌い」を標榜しつつも、一代の才子長野主膳との親交を通して、曇りのない目で時代を見据えていた。
しかし、絶世の美女たか女との出会い、 それに思いがけず井伊家を継ぎ、 幕府の要職に就くや、直弼の運命は急転していった……。
出版社 祥伝社 ¥540
なぜ、広い世界に目を向けようとしないのか?米国 総領事ハリスの嘆きは、
同時に井伊直弼の嘆きでもあ つた。
もはや世界の趨勢を止めることはできい。
徒らに撰夷を叫ぶことは、日本国自体を滅亡させることだった‥‥。
腹臣長野主膳、それに直弼の密偵として、また生涯を賭して愛を捧げたたか女を配し、維新前夜 に生きた直弼の波欄の生涯を描く、不朽の名作。