密命シリーズ

 博士の本棚
 2015/2/3読書開始 2/17読破
新潮社版¥1575

本を読むときは言葉の海に身をゆだねるだけ。
読書歴を語ることは、私の人生を語ることです。――小川洋子


図書室で夢中になった『秘密の花園』『小公子』、でも本が無い家だったので愛読書はなんと
『家庭の医学』だった。
13歳で出会った『アンネの日記』に触発されて
作家を志す。オースター、ブローティガン、
内田百けん、村上春樹……本への愛情がひしひしと伝わるエッセイ集。
思わぬ出会いをたくさんもたらしてくれた
『博士の愛した数式』誕生秘話や、愛犬の尻尾にふと白毛を見つけた感慨なども。

 

読書ファンの皆さん、今日は〜

 

今日の読書紹介は「博士の本棚」。

 

 本の中で特に気に入った部分は
「抱き寄せたいほどに愛らしい兄弟の物語(ミリオンズ)」より

このあたりの事件の面白さについては、私などがくどくど説明する必要なないだろう。
兄弟はもちろん、脇役一人一人にあふれる温かい人間味、小道具の使い方の絶妙さ(特にお母さんの形見、肌色のモイスチャーライザーが印象的)、


P258の
馬締はふと、触れたことがないはずの先生の手の感触を、己れの掌に感じた。
先生と最後に会った日、病室でついに握ることができなかった、
ひんやりと乾いてなめらかだったろう先生の手を。

死者とつながり、まだ生まれ来ぬものたちとつながるために、ひとは言葉を生みだした。

岸辺が宮本とケーキを食べている。編集部員は接待に徹し、
会場では飲食をしないようにと言ったのに。
楽しそうにお互いのケーキをフォークでつつきあっている。
佐々木は壁際で白ワインの入ったグラスを傾け、
西岡はあいかわらず軽薄な物腰で挨拶まわりを続行中である。

『大渡海』の完成を喜び、だれもが笑顔だ。

俺たちは舟を編んだ。太古から未来へと綿々とつながるひとの魂を乗せ、
豊穣なる言葉の大海を

ゆく舟を。